代表メッセージ

全国川ごみネットワーク金子代表理事
代表理事 金子 博

 前代表に引き継いで、2代目の代表を担うことになりました。
 10代の終わり、東京の多摩川水系・野川での湧水保全活動から河川環境問題へ関わることになってから、40年数年が経ちました。25年ほど前に山形県酒田市に転居してからは、海洋プラスチックごみ問題に取り組むことが活動の中心となりました。河川環境をめぐる活動では、全国各地で志を同じくする、かつ個性豊かな人たちとの交流とフィールドで自身が成長できたなと振り返っています。

 海洋プラスチックごみ問題に取り組んでからは、法制度の構築などにも携わってきました。海洋ごみの多くが川を通じて流れ出る身近な生活ごみであり、川ごみの清掃活動が全国各地で行われているのになかなか改善しない。このような現状から、全国川ごみネットワークの設立にも関わりました。
 SDGsのキーワードがあふれ出してきていますが、原点である前代表のメッセージに託された想いを土台に、みなさんといっしょに引き続き取り組んでいきます。活動資金は乏しいが課題は山積、それでも活動は楽しく。
 

Af 連載 “L’Amant(ラマン)” あなたは地球を愛してますか?~⇒Af_272インタビュー 金子博はこちらから
(地球の抱える問題に立ち向かっている、著名人・有識者・NPOやNGO団体の代表、そして政治家の方々にフォーカスした、インタビューの連載コンテンツ。 )

 

 
 
=======前代表のメッセージ=======

全国川ごみネットワーク
前代表(座長) 亀山久雄

 「うさぎ追いしかの山 小ぶな釣りしかの川」で始まるふるさとの曲が流れるとつい口ずさんでしまうのは私だけではないでしょう。私は栃木県の小さな町に生まれました。少年時代、川は生活と結びついていて子どもたちの遊びの場でした。だから大人も子供も川にむやみに物を捨てたりしない。捨てれば大人たちから注意され、叱られたものです。その川も両岸はコンクリートで固められ、私の原風景は見る影もありません。

 経済的な発展が右肩上がりに続き、毎日の暮らしに必要なものはたくさんあるし、選択肢も広がりました。しかし、そのフェーズは終わりつつあります。何もない貧しい時には何でもある素晴らしい世界を想像できますが、欲しいものがほぼ手に入る世界ではもっと素晴らしい未来はなかなか思いつけないものです。

 昨年(2019年)、1カ月半の間に3回も被災したという人がテレビで途方に暮れていました。記録的豪雨で河川が氾濫する危険を知りつつどうにもならない台風の恐怖のさ中「命を守る行動をとってください」という強い表現が使われました。外国から攻撃される危険は外交努力で回避できますが、自然災害は回避できないし、今後ますます被害は大きくなります。地球温暖化による気候変動は目の前まで迫っているのです。

 地球温暖化が進行するなかで、山も川も海も泣いています。プラスティックごみによる海の汚染が深刻化し、海の生き物など生態系への影響が心配されています。町から発生したごみは河川を通じて海へ流れ込みます。ごみの8割以上がレジ袋、包装袋、ペットボトルなどプラスティック製です。スペインの地中海岸にマッコウクジラが打ち上げられ、胃や腸から約30㌔ものゴミが見つかりました。その多くはプラスティック製品で、捕食できずに餓死したとの報道がありました。このクジラが象徴するように、人間の生活圏から遠い北極海や南極海、世界で最も深いマリアナ海溝でも見つかっているのです。

 プラごみ対策は待ったなしのところまで来ています。

 世界各国はお互いの利害を乗り越え、指針を明らかにして具体的に取り組むべきです。地方行政は、回収、分別の徹底と同時にゴミマップを作成して啓発し、市民とともに行動を積極的に起こしてほしいものです。企業はボランティア団体への寄付だけでなく、社員も運動に参加できるような仕組みを作ってはいかがでしょう。一方、プラスティックは防水性や耐久性に便利な道具ですが、過度な使用制限は私たちの生活に影響が出ます。プラスティック製品を作っている企業と市民が膝を突き合わせて解決方法を探っていくことも求められるのではないでしょうか。

 プラスティックごみによる海洋汚染の深刻化を受け、市民活動も高まり、全国的に広がっています。町や河岸、海岸、湖畔など一人でごみ拾いをしている人もよく見かけるようになりました。こうした中で求められているのは、全国各地で行われている市民運動の経験を交流し、学び、力にしていく、そのためのスクラム型、ネットワーク型の運動ではないでしょうか。

 持続可能な社会はどうやって作れるか。問われているのは理想を議論するプラットホームなのかもしれません。

 全国川ごみネットワークに加盟、協力していただき、一緒に歩きませんか。
子供たちに美しい川を残していくために。